綿密なリサーチに基づき、的確なメッセージを動画で配信:DOVEのケース

 
ユニリーバのブランドDOVEのMy Beauty My Sayキャンペーンがアメリカのマーケッターの注目を集めています。

自分の美についての何らかの悩みを持つ複数の女性が登場する My Beauty My Sayキャンペーンの動画は、なぜ多くの女性の共感を呼んでいるのでしょうか?
その背後には、ユニリーバが実施した綿密なリサーチがあったのです。

  

DOVE(ダヴ)のMy Beauty My Sayキャンペーン

オランダとイギリスに本部を置く食品・ビューティー・トイレタリーメーカーのユニリーバは1890年代創業の100年以上の歴史をもつ老舗多国籍企業です。
リプトン、クノール、LUXなどのブランドに加え、DOVE(ダヴ)もユニリーバが誇る有名ブランドです。

DOVEは1957年にアメリカで生まれた石鹸・スキンケア用品のブランドです。
平和の象徴である鳩に名前が由来し、単に汚れを落とすだけでなく、肌に潤いを与えるというコンセプトで登場、瞬く間に人気商品となりました。
DOVEは世界中に広がり、日本市場でも1999年から販売が開始されています。

DOVEはアメリカで12年前から“Dove Campaign for Real Beauty” (本当の美しさを求めるDOVEキャンペーン)を展開、女性の美をテーマに消費者にメッセージを発信してきました。

” My Beauty My Say”キャンペーンはDOVEの最新のキャンペーンで、「容姿で女性を評価する社会規範に対し、彼女ら自身の美しさでそれに対抗する」ものです(DoveのMy Beauty My Sayキャンペーン公式ホームページより)。
My Beauty My Sayキャンペーンは、自分達自身の美しさに立つ、アメージングな女性達の物語を紹介しています(同左)。
では、早速そのMy Beauty My Sayの動画を観てみましょう。

   

多くの女性達の賛同を集めるMy Beauty My Say動画

My Beauty My Say動画には個性的な複数の女性が登場します。
ヘザーはブロンドが綺麗な美人ボクサー。
「顔が可愛すぎて闘えない」という周囲の偏見に悩まされています。

おデブなファッションブロガーのジェシカは「痩せた女の子じゃないとかわいい服は着れない」と周囲から言われ続けています。
その他に弁護士を目指すメキシコ人女性、世代違いの服を着ようとするファッション好きの高齢の女性、歯の見た目が良くない女性、ボーイッシュなモデルでLGBTの女性などが次々に登場します。

動画の中で彼女達は一様に、周囲の人が自分についてこう言っていると話します。
「私の鼻が極端に大きすぎる」
「まるで男みたいだと言っている。女性についての話題があると、私は該当しない」
「(歯科医院に行けば)その歯は簡単に矯正出来るよと言われる」
「道の向こう側から大声で冷やかされたこともある」
「恥ずかしい鼻だ」「デブすぎる」「痩せすぎ」「クレージーなヘアスタイルだ」「ワイルドすぎる」等々。

しかし、彼女達は力強く反論します。
「私は、私です」「周囲の期待が私を私にするのではありません」
「年齢で着る服を選ぶのではありません。私は、私が着たい服を選ぶのです。」

そして冒頭に登場したボクサーのヘザーが再び登場、次の様に言います。
「私の顔とボクシングとは何の関係もありません。
『顔が可愛すぎて闘えない』なんて言われるけど、私はアメリカ国内ランキング1位、世界ランキング2位のボクサーです」

おデブなジェシカも言います「ファッションブロガーとして、私のドレススタイルは100%自信があります」
歯並びの悪い女性も応えます「私は、私の歯を矯正したくありません」
弁護士を目指すメキシコ人女性も「私のルックスは、私の能力と何ら関係ありません」

My Beauty My Sayとは、日本語では、私の美しさ、私の主張、とでもなるでしょうか。
動画の中ではそれぞれの偏見に苦しむ女性達が、形は違うものの共通の声をあげています。
人が何と言おうと私は私。私の美を決めるのは他人じゃない、私が決めるのだ、と。

現代のアメリカ人女性を取り巻く社会規範に毅然と対抗するこの動画は多くの女性達の支持を集め、現時点で130万回近い再生回数を記録しています。

   

綿密なリサーチに基づいたメッセージ

My Sayキャンペーンには、ユニリーバが行った調査が大きく関係しています。
2016 Dove Global Beauty and Confidence Reportと題されたレポートによると、調査対象となった全世界の女性のうち、わずか4%しか自分を美しいと思っていないことがわかったのです。

また、対象となった未成年の少女のうち、わずか11%しか自分を美しいと評価してなく、72%が美しくなるために強烈なプレッシャーを感じていることも判明。
さらに54%の女性が、自分自身が自分の美についての最悪の評価者であることもわかったのです。

DOVEのメッセージは明確です。
DOVEはMy Beauty My Sayキャンペーンを通じ、すべての女性に「自分の美を決めるのは自分自身です。自信を持ちましょう。あなたは美しいのです」と訴えているのです。

My Beauty My Sayの動画には動画を観て勇気づけられた、励まされたという女性のコメントが数多く投稿されています。
美しくならねばならないというプレッシャーを抱えた女性達にとって、DOVEのメッセージはどれだけ救いになることでしょう。

ところで、My Beauty My Say動画の中にはDOVEの製品はまったく登場しません。
動画は最初から最後まで女性達のストーリーが詰め込まれ、最後にDOVEのロゴが短時間露出されるだけです。
My Beauty My Sayキャンペーンは、製品を売るのではなく共感を売るというマーケティング戦略のお手本のような仕上がりになっています。

消費者の課題を発見してそれに対するソルーションを提示する、製品を売るのではなく共感を売る。
そのための媒体として動画は打って付けであると、My Beauty My Sayキャンペーンは教えてくれています。

  
参照:
https://www.dove.com/us/en/stories/campaigns/my-beauty-my-say.html
https://www.unilever.co.jp/about/who-we-are/introduction-to-unilever/
http://www.business2community.com/video-marketing/top-4-best-viral-video-
https://www.youtube.com/watch?v=_XOa7zVqxA4
marketing-campaigns-2016-01735826#Mgy7pgMJy84zhUeo.97
https://www.dove.com/us/en/stories/about-dove/our-research.html

 

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