WrigleyのExtraガムに学ぶエモーショナル動画マーケティング

動画マーケティングの現場でエモーショナル動画を使うケースが増えて来ています。

WrigleyのExtraガムは、エモーショナル動画をマーケティングに活用している代表的ブランドの一つです。
エモーショナル動画をどのように効果的にマーケティングに使うのか、Extraガムの事例からエモーショナル動画マーケティングを学びます。

エモーショナル動画マーケティングとは何か?

動画マーケティングでエモーショナル動画(Emotional video)を使うケースが増えて来ています。
エモーショナル(Emotional)とは、ミリアム・ウェブスター英語辞書によると、「感情に訴えるか、感情を喚起するもの」という意味で、エモーショナル動画とは「感情に訴える動画」となるでしょう。
観た人を感動させたり、心を動かしたり、気分を高めたり、考えさせたり、インプレッションを与えたりするタイプの動画と言ってもいいかもしれません。

エモーショナル動画に対する消費者の評価は総じて高く、マーケティングコンサルティング企業Trend Hunter Marketingの調査によると、調査対象となった55のエモーショナル動画に対する消費者の平均好感度は10点満点中8点で、非エモーショナル動画のものより高い結果になっています。

また、実際の製品購入などへのコンバージョンレートも高く、非エモーション動画の平均コンバージョンレートの倍になっています。
あるキャンペーンで、消費者の評価が最も高いエモーショナル動画を使ったところ、売り上げが23%増加したという結果も報告されています。

近年主流のマーケティング理論では、一般的にモノよりも思想やライフスタイルといった目に見えないものに価値の軸足を置く傾向にありますが、動画マーケティングの世界も例外ではないようです。

ところで、リグリースタジアムで有名なアメリカの製菓大手企業WrigleyのExtraガムは、エモーショナル動画をマーケティングに活用している代表的ブランドの一つです。
エモーショナル動画マーケティングの事例を、Extraガムのケースに見てみましょう。

Extraガムのエモーショナル動画マーケティング

The Story of Sarah and Juan(サラとホアンの物語)と名付けられた1分57秒の動画はサラとホアンというティーンエージャーの男女が出会い、付き合い、結ばれる一連の流れを映像化したエモーショナル動画です。

上質の映像に初々しい二人が仲睦まじく結ばれてゆく様子が、まるでよく出来たショートムービーのように描かれています。
映像の中では二人の会話はまったく登場せず、ヘイリー・ラインハートが歌うCan’t help falling in love(好きにならずにいられない)がバックグラウンドで静かに流れてゆきます。

映像の中ではシーンの各所でExtraガムが自然に登場し、それとなく存在感をアピールしますが、不自然な感じや押しつけがましい感じはまったくありません。

シーンは高校での出会い、初めてのデート、高校の卒業パーティー、空港での別れ、遠距離恋愛、再開へと続き、最後にホアンがサラと出会った日から思い出ごとにガムの包み紙に描いていたイラストを飾ったギャラリーへ移ります。
ギャラリーに飾られたイラストを、サラがひとつずつ確かめるように見つめるシーンの最後はホアンがサラにプロポーズするシーン。
サラが後ろを振り向くとホアンがひざまずいてサラに結婚指輪を差し出す感動的なエンディングを迎えます。

2015年10月に投稿されて以来、この動画のYouTubeでの再生回数は2,087万回にも達しています。
YouTubeの動画ページには「この動画を見るたびに涙が出て来るのは何故なのだろう?」「美しい映像だ。今まで見た中で最高のコマーシャル動画だ」「離れて暮らす彼女を思い出す。涙が溢れてくる」等々、感動した視聴者のコメントが多数書き込まれています。

Extraガムは数年前にも父と娘の交流を描いた”Origami”(折り紙)という感動的なエモーショナル動画を公開し、消費者とマーケッターの注目を集めています。
動画Origamiでは、娘の人生の思い出の場面ごとに父親がガムの包み紙で小さな折り紙を折って娘にプレゼントしています。
プレゼントされた折り紙を娘は大切にとっておいていて、嫁ぐ日に箱の中から出て来て父親に感動を与えます。

Extraガムのエモーショナル動画は、Extraガムという製品を消費者へ直接的に売るのではなく、「男女の愛」「親子の愛」「家族愛」といった価値観を消費者と共有し、共感してもらうことでブランド価値を高め、結果として製品の販売へつなげるという展開になっているのです。

エモーショナル動画マーケティングを成功させるポイントは?

では、エモーショナル動画マーケティングを成功させるポイントは何でしょうか?
私は、まずは企業が消費者と共有・共感出来る、確固とした価値観を持つことだと思っています。

Extraガムは家族愛という価値観を消費者と共有し、ブランド価値と信頼を得ることに成功しています。
確固とした価値観をもって同様のスキームを確立できれば、マーケティング的に成功させられる可能性が高まるでしょう。

多くのモノが溢れる現代、エモーショナル動画をマーケティングに活用する機運はさらに高まって来るでしょう。
企業としては製品やサービスの物理的な性能を向上させるとともに、目に見えない価値も高めてゆき、さらには消費者と共有出来る価値観を持つことがますます求められて来ます。

社会の構成員としての企業が、他の構成員としての消費者といかなる価値観を共有出来るのか、消費者から厳しく問われる時代が到来したようです。

参照:
https://www.merriam-webster.com/dictionary/emotional
https://contently.com/strategist/2016/04/14/dangerous-power-emotional-advertising/
http://www.extragum.com/
https://www.youtube.com/watch?v=XLpDiIVX0Wo

 

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