ダラーシェイブクラブのお笑い動画マーケティング

 
お笑い動画がマーケッターの注目を集めています。
視聴者を笑わせ、長らく記憶に残るお笑い動画を、マーケティングにどのように活用すべきでしょうか?
お笑い動画を事業立上げに活用し、大きな成功を収めたアメリカの会員制髭剃り通販クラブ、ダラーシェイブクラブのお笑い動画マーケティングに学びます。

   

2447万回の再生回数を集めるお笑い動画

ダラーシェイブクラブ(Dollar Shave Club)はロサンゼルス近郊の街ベニスに拠点を置くベンチャー企業です。
マーク・レヴァイン氏とマイケル・デュビン氏の二人がパーティーで意気投合し、社名の通り「一ドル程度の安価な価格の髭剃りクラブ」の発足を目指して2011年1月に設立されました。

アメリカのスーパーやドラッグストアで売られている髭剃りは総じて価格が高く、毎月かかるコストも馬鹿になりません。
創業者の二人は、安価で高品質の髭剃りを会員へ毎月届け、会員の髭剃り購入コストを削減するとぶち上げたのです。

会社設立から直ちにオペレーションを開始し、翌年2012年3月には製品を出荷出来る状態になりました。
設立直後のダラーシェイブクラブは知名度ゼロ、誰もその存在を知りません。
ダラーシェイブクラブの会員をどうやって集めるか。
創業者二人は熟考の末、YouTubeへ動画を投稿して拡散することを思いつきました。

動画の内容はニューヨークで8年間即興コメディを学んだというデュビン氏が企画し、自ら主役として出演しました。
動画は友人の手を借り、わずか一日で4,500ドル(約50万8千円)程度の予算で撮影されました。

動画は2012年3月6日にYouTubeに投稿され、直後から拡散が始まりました。
動画にはアクセスが集中し、動画を見た視聴者が入会申し込みページに殺到、ダラーシェイブクラブのWebサーバーが動画投稿から1時間でダウンしました。
急いでサーバーを復旧させたその後、48時間で12,000件もの入会申し込みが集まるという驚異的な結果を出しました。

動画は他のソーシャルメディアも巻き込んでさらに拡散し、現在も大量のアクセスが集まっています。
ダラーシェイブクラブのこの記念すべき動画は、現時点までに2447万回も再生されています。

   

ダラーシェイブクラブのお笑い動画はなぜヒットしたのか?

「こんにちは。ダラーシェイブクラブ創業者のマイクです。
ダラーシェイブクラブって何ですかって?
わずか1ドルで毎月高性能髭剃りをお届けするクラブです。
わずか1ドル?そうです、1ドルです。
ちゃんとした髭剃りなのかって?いえいえ、ちゃんとしているのではありません。
ものすごくちゃんとしているのです ”Our Blades are F**king great.”」

シリアスな顔をしたデュビン氏が視聴者に語りかけるスタイルの動画は下品な四文字言葉を織り交ぜ、髭剃りに毎月高いお金を払うのは馬鹿馬鹿しいと訴えていきます。
デュビン氏は工場内を歩きながらダラーシェイブクラブが地元の雇用を生んでいることなどもさりげなくアピールし、最後に出演者がアメリカ国旗の前でダンスするシーンで終わりを迎えます。

動画を通じて伝えられるメッセージはシンプルです。
「既存の髭剃りは高すぎます。
買いに行くのも面倒だし買うのを忘れてしまう時もあります。
ダラーシェイブクラブへ入会すれば毎月わずか1ドルで高性能髭剃りを毎月ご自宅へ配達します」
というシンプルなメッセージを、笑いのツボをおさえたデュビン氏が表現し、動画全体がひとつのショートコメディに仕上がっています。

やや衝撃的なインパクトを与えるお笑い動画は拡散し、メッセージが響いた多くの消費者を動かしました。

今日、ダラーシェイブクラブには110万人の会員が存在し、同社の時価総額は6億1,500万ドル(約695億円)に達しています。
なお、同社は2015年にユニリーバに10億ドル(約1,130億円)で買収され、創業者二人に巨万の富をもたらしました。

   

お笑い動画マーケティング成功のポイント

ダラーシェイブクラブのお笑い動画マーケティングが成功した理由は、第一に既存の髭剃りを購入している消費者の不満やニーズを的確にとらえた事でしょう。
髭剃りのビジネスモデルはジレットモデルと呼ばれるカートリッジの販売で利益を確保するスキームが一般化し、価格が総じて高くなっていました。

ダラーシェイブクラブの創業者は、自らそうした不満やニーズを抱えていて、他の多くの消費者も抱えていると考え、ダラーシェイブクラブを設立しました。
そこにある消費者ニーズを的確にとらえる事が、動画マーケティングを含むマーケティング成功の条件になるでしょう。

また、お笑い動画そのもののクオリティを高める事も重要です。
デュビン氏はニューヨークで即興喜劇を8年間勉強し、人を笑わせるスキルを身に着けていました。
「何が人を笑わせ、なぜ観客が笑うのかについては、即興喜劇の一連のプロセスから学ぶことが出来る」とデュビン氏は語っています。

デュビン氏はさらに、自分が学んだそうしたスキルを自分たちの動画作りに活かしていると言っています。
しっかりと設計され、洗練された内容のお笑いビデオが消費者ニーズをとらえた時、大きなポジティブ反応が起こると考えるべきでしょう。

とどのつまり、お笑いのためのお笑い動画をYouTubeに載せるだけでは成功はおぼつかないということです。
消費者ニーズをしっかりととらえ、それに適応した製品やサービスを提供する。
そのためのマーケティング手段としてお笑い動画を活用する。
こうした一連のプロセスを経ることが、お笑い動画マーケティングの必勝パターンになると思います。

 
参照:
https://www.inc.com/magazine/201604/kris-frieswick/dollar-shave-club-michael-dubin.html
http://www.huffingtonpost.com/moneytips/inside-the-dollar-shave-club_b_8169898.html
https://www.youtube.com/watch?v=ZUG9qYTJMsIhttps://www.impactbnd.com/blog/how-dollar-shave-club-grew-from-just-a-viral-video-to-a-615m-valuation-brand

 

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