【動画マーケティング成功事例】川口市の場合

川口市が2017年3月20日から公開したCM動画が話題です。

動画は4人家族が物件探しに不動産屋さんを訪れるところからスタートします。

「代官山か白金台あたりで。部屋は4人家族だからそれぞれ個室とリビングとダイニング。
あと、最近ジョギングにハマってるんで、トレーニングルームもあって。ローンは10年以内。月々2万3千円くらい。」
と無理難題を言います。

店員が「あるわけないだろう!」と不動産屋さんが激怒したところで、川口市のゆるキャラである「きゅぽらん」がリズムに乗って登場。

「提案があるんだけど」と、川口市の提案を始めます。

きゅぽらんは、「(川口市は)ほぼ東京。」「東京駅まで23分」「治安だって言うほど悪くないし」「大きな公園もショッピングセンターもある」「割と都会だけど緑も沢山ある」と、ちょいちょい自虐を織り交ぜながら川口市の魅力を語ります。

だんだんとその気になってきた家族に向かって、きゅぽらんは「荒川のこっち(川口市)と向こう(東京)というだけで、マンションの価格が25%くらい違う」とクロージングトークを展開。
最後は、「お願い住んで川口市」と締めます。

川口市の等身大の魅力を、時折自虐も織り交ぜながらアピールしたコミカルな動画は、29860回再生されており(2017年4月27日現在)、反応も「何度見ても思わず笑ってしまう」と概ね好評価を得ている様子。

川口市の動画マーケティングが成功したのは、他の地方自治体のCMと同じトンマナではなく、「自虐を織り交ぜることで差別化を図った」というユニークな戦略あってこそ。他の地方自治体のCMは風光明媚な観光スポットや美味しそうな食事などをシズル感たっぷりに紹介していくというトンマナで制作しているのが一般的。

川口市が同じようなCMを制作していたら、せっかく作ったCMも他の地方自治体のCMの中に埋もれてしまって世間で話題になることはなかったでしょう。
数多ある動画の中で抜きん出て成功を収めるためには、どこに差別化のポイントを置くのかという観点から戦略を立てることが大切です。

そして、もう一つ、川口市の動画マーケティングが成功したのは、消費者の「共感」を得る内容に仕上げたという点です。
川口市の「東京よりの埼玉」という絶妙な立ち位置や、「治安が悪い」という風評などは、川口市の強みでは決してないので、通常であればCMの中に折り込むことは避ける訴求内容です。

ですが、「東京よりの埼玉」「治安が悪い」というのは言わば世間の共通認識でもあるため、そこを無視してCMを制作してしまうと、結局は「虚像」の川口市をアピールしているだけになってしまうので、消費者の共感を得られません。
良いところも悪いところも包み隠さずアピールするという、川口市の愚直とも言える謙虚な姿勢が消費者の共感を得たからこそ、「バカ正直さに笑った」というような世間からの高評価を得られたとも言えます。

どんな商品やサービスでも完璧なものはありません。
川口市の動画マーケティングの成功事例を習って、過度に美辞麗句を並べるような動画を制作するよりも、その商品やサービスの「リアル」をアピールするような動画を制作すると言うのも、今後中小企業や地方自治体が選択すべき戦略の大きな流れになるでしょう。

消費者は、背伸びして良いところだけを切り取った動画には反感を覚えるものですが、良いところも悪いところも含めてそれが自分である!というように正々堂々と勝負する動画には共感や憧れなどプラスの感情を持つものです。

もともと、日本人は完全無欠のヒーローよりも、ちょっとダメなところがあるヒーロー像に肩入れするというか、完璧なものではないものを愛でるという文化的な背景を持っています。
「自社の製品は、ここがダメだから動画なんて制作できない」と諦めるのは早計です。
そのダメなところこそが消費者に愛されるポイントともなり得るからです。

もちろん、ダメなところばかり訴求するのではなく川口市の動画のように、良いところや消費者のメリットはしっかりと訴求することが大切です。
自社が考える良いところは、消費者からみたメリットであるという訳では決してありません。

独りよがりのアピールではなく、あくまでも「消費者に取っての」メリットであるところを訴求しましょう。
自社の良いところはなかなか自分たちでは分からないものだったりするので、過去に実施した顧客アンケート結果などを上手く活用したり、外部の動画制作会社やマーケティング企画会社などを活用したりして、徹底して「顧客目線」で自社の強みを分析してみましょう。

今、消費者に受ける動画は、川口市の動画のように「背伸びしない、肩に力の入っていない、ゆるい雰囲気の」動画です。
自分の良いところだけをアピールする動画ではなく、良いところと悪いところが6対4くらいの適度な自虐を含んだ動画が消費者の共感を得るので、そのバランス感覚も大切です。

 

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